2011年10月19日

秋の陽の色を映す金茶が染まった

アメリカセンダングサの染色 森の草木染め2



春から夏へかけて、草薮の中にある時は、まったく目立たず、畑の脇の草切りをするときなどには、弱い茎はすぐに折れ、倒れて踏みつけられてしまう。薄い黄色の小さな花もこれといった特徴はなく、やはり路傍で見過ごされてしまう。おそらく、食用にもなるまい。
ところが、秋が深まり、すべての草木が紅葉を終え、落葉してしまう頃、この草の実が俄然、存在感を示す。筆先をぶつ切りにして束ねたような、直径5ミリ、花茎の長さ1センチほどの花束の一本一本が茶褐色の鋭い棘となって、人といわず、動物といわず取り付いて離れず、それが靴下やセーター、毛皮などであれば、中へ中へと深々と喰い込んでゆき、ついには肌にチクチクと刺さる。冬に獲物を追って野山を駆ける犬などは、身体中にこの実をくっつけて帰って来て、飼い主を閉口させる。まことに不愉快な子孫繁栄術を持つ草なのである。

ほいとうと 呼ばれる村の しぐれかな
                 山頭火

上句は放浪の俳人・種田山頭火が、熊本・宮崎を経て大分から湯布院へと向かった旅の途中に「ホイト、ホイト」と呼ばれ、子供たちから石を投げられた辛さを詠んだ句である。「ほいと」とは「こじき=乞食」の蔑称で、もともとの乞食(こつじき)修行をする仏僧の意味から物乞いをする貧しい人々へと価値観が著しく低下した呼称である。このいやな草がホイト草と呼ばれるゆえんであろう。
ひっつき虫、ひっつき草、ホイト草などと呼ばれるアメリカ原産の、嫌われもののこの草は、染料としてはなかなか魅力的である。銅媒染で初秋の陽の色を映したような金茶が染まり、アルミ媒染で薄い黄色、鉄媒染でオリーブ色などが染まるのである。
今回は、シルク20%・麻80パーセントの布地とシルクの靴下をミョウバン媒染で染めてみた。


採集してきたアメリカセンダングサを細かくカットし、水洗いして約30分煮沸する。


 赤い煎液が得られる。これにミョウバン液に浸した布を入れ、さらに煮沸する。



20分ぐらいで黄色に染まってきた。さらに30分煮沸し、冷ますとシルク20%、麻80パーセントの布地が金色がかった茶色に染ま ったのである。秋の陽の色を映したような風合いである。


 靴下は椿のアクで染め重ねると、鮮やかなオレンジ色となった。これも思いがけない発色。
 自然の神秘を実感する瞬間である。


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Posted by 友愛社 at 08:36│Comments(0)自然芸術館
 
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秋の陽の色を映す金茶が染まった
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