2010年06月04日

竹の子と蕗と小綬鶏の煮付け [がんじいのジビエ手帖14] 

竹の子と蕗と小綬鶏の煮付け [がんじいのジビエ手帖14]
 
     竹の子と蕗と小綬鶏の煮付け [がんじいのジビエ手帖14] 

梅雨入り前のからりと晴れた一日。
がんじいは老母(この春で82才になった)を連れて竹林に向かった。
筍(孟宗)の季節が終わると、その名のとおり勢いよく伸び出てくる破竹(ハチク)、根元部分の節がぐるぐる巻きになった小さな竹・胡参竹(コサンチク)、竹細工の素材として重用される真竹(マダケ)などの「竹の子」が次々に芽を出してくる。春から初夏へかけて、食卓は数々の竹の子料理で彩られるのである。
竹の子採りは、若いころ山で過ごした経験をもつ老母の楽しみのひとつである。竹林は、食糧の不足した冬を乗り切った後、家族の食欲と味覚を満足させてくれる素材の一等の供給地であったありがたさと、のどかな山村の生活の記憶とがよみがえり、ひとときの安息と癒しを与えてくれる場所なのであろう。
竹林の入り口に、一羽の鳥が落ちていた。コジュケイ(小綬鶏)であった。直前に、車にぶつかるか、あるいは鷹に襲われるかして、墜落死したものらしかった。がんじいと老母とは、顔を見合わせ、ただちに「頂く」という決断をした。猟師の妻でもあった母は、すぐに「竹の子と野鳥の煮付け」のイメージが浮かんだのだ。コジュケイは、小型のキジ類で、鶏よりも小さく鳩よりも少し大きい。叢林や藪の中に棲息し、チョットコイ、チョットコイの鳴き声で親しまれる「里山」の鳥である。正真正銘の「地鶏」ともいうべきこの鳥が、焼いて良し、煮て良し、ソバやウドンのダシにしてもまた良しの一級の食材なのだ。
思いがけぬ山の神様からの贈り物があった日、竹林の中からも、見事な竹の子が得られた。さらに、野生の蕗(フキ)の群生も見つかった。
早速、持ちかえり、中庭に拵えてある石製の竈で火を焚き、山の媼は鳥の毛をむしりはじめた。中庭と竈と家を抱くようにそびえる楠の大木に向かって、青い煙が立ち昇り、良い香りとともに樹間を漂い流れていった。
調理法については紙数を要しない。竹の子を好みの大きさに切り、コジュケイはぶつ切りにし、フキは丹念に皮を剥いで4~5センチほどの長さに切りそろえて、一緒に醤油とミリン少々、酒と赤トウガラシを加えて煮込む。
夕刻、里山料理が出来上がった。久方ぶりの「猟師の味」には、きりりと冷やした日本酒が合った。

     竹の子と蕗と小綬鶏の煮付け [がんじいのジビエ手帖14] 
       
茶臼原自然芸術館では、この竹林を整備しながら、竹の子を採集し、茹でて出荷しています。作業を重ねることで、「楮」の群生地を「保護・育林」する効果があります。美しい竹林・里山の森・素材の採集地などは互いに関連し合って維持されるのです。
 


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Posted by 友愛社 at 09:45│Comments(0)がんじい
 
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